プラスチック=熱に弱いイメージをお持ちではありませんか? プラスチック製品を熱で変形させてしまった経験がある方も多いかもしれません。プラスチックの中にはみなさんのイメージ通り耐熱温度が低く、熱に弱い素材もありますが、一方で高温にも耐えられる耐熱温度が高い素材もあります。
今回のブログではプラスチックの耐熱温度にスポットを当て、身近なプラスチック製品の耐熱温度や、耐熱温度の測定方法について、試験機メーカーである安田精機の視点で解説していきます。
<目次>
身近なプラスチックの耐熱温度と使用場面
まずは身近なプラスチック素材の耐熱温度や使用場面を紹介します。数あるプラスチック素材の中で、身の回りで良く使用される4種類のプラスチックをまとめて四大汎用プラスチックと呼ばれています。
【四大汎用プラスチック】
- ポリエチレン(PE)
- ポリプロピレン(PP)
- ポリスチレン(PS)
- ポリ塩化ビニル(PVC)
これらのプラスチックは広範囲に使用され、それぞれの特性に応じて異なる分野で使用されています。以下に特徴・耐熱温度・使用場面を簡単にまとめます。
ポリエチレン:耐熱温度60℃~80℃
ポリエチレンはごみ袋やプラスチック容器などで使われる素材で、柔軟性があって簡単に伸びるのが特徴です。耐熱温度は低く、熱を加えると変形してしまいます。
ポリプロピレン:耐熱温度80℃~120℃
四大汎用プラスチックの中では耐熱温度が高く、熱に強い性質が特徴です。そのため、湯船や電子レンジで使用する保存用のビニール袋やタッパーなどの容器に用いられるシーンが多いです。
ポリスチレン:耐熱温度60℃~80℃
ポリスチレンは加工がしやすくさまざまな成型方法に対応できる特徴があります。発泡スチロールはポリスチレンを発泡成形した素材で、軽くて断熱性に優れるため幅広く使用されています、耐熱性は低く、燃えやすいので高温では使用できません。
ポリ塩化ビニル:耐熱温度60℃~80℃
太陽光や雨に強く、屋外使用時の対候性に優れています。そのため、ビニールハウスやパイプなど屋外で使用されることが多いです。耐熱性は低いため、高温での使用には向いていません。安価で製造できるため広く普及しています。
身の回りのプラスチック素材(四大汎用プラスチック)は耐熱温度が低く、熱に弱い性質のものが多いことがわかりました。日常の場面を振り返ってみると、買い物時のビニール袋やお菓子やトレイなどのプラスチック容器を火のそばに置いて変形させてしまった経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
プラスチックが熱に弱いイメージがあるのは、身の回りで多く使用される素材が熱に弱い特徴を持っているためだとわかります。
しかしプラスチックの中には、熱に強い性質を持った素材も多く存在します。次の章では熱に強いプラスチック素材やその特徴を探ってみましょう。
熱に強いプラスチック素材
ここからは熱に強い性質を持つプラスチック素材を紹介していきます。120℃以上でも使用できるプラスチックは次のような種類が該当します。
【耐熱温度が高いプラスチック素材】
・ポリフェニレンサルファイド(PPS)/耐熱温度220℃
使用例:自動車部品、電化製品、住設機器
・ポリエーテルケトン(PEEK)/耐熱温度260℃
使用例:医療機器、航空機の部品、オイルやガスの採掘機器
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)/耐熱温度260℃
使用例:フッ素樹脂加工のフライパン、調理器具のコーティング
・ポリイミド(PI)/耐熱温度300℃~
使用例:航空機のエンジン部分、電子機器の断熱材
熱に強い素材の中には300℃以上の高温環境に耐えうる素材もあります。絶縁性や軽量性、耐腐食性など機能的な性質を兼ね備えているため、自動車や航空機の分野や医療分野、さらには航空宇宙分野などでもプラスチック素材が活躍しています。
生活に身近な耐熱温度の高いプラスチックはフライパンのフッ素樹脂加工です。こちらの記事でもご紹介しましたが、フッ素樹脂も熱に強いプラスチック素材を活用した製品の一つです。
では、耐熱温度とはどのように試験され、算出されるのでしょうか。次の章では、耐熱温度の試験方法にスポットを当てていきたいと思います。
耐熱温度の試験方法
一言で「耐熱」と言っても、その試験方法はさまざまです。製品の分類や目的、どの法規制に該当するかによって耐熱性試験の方法が異なります。ここからは、一般的な試験方法と、安田精機の耐熱試験機をご紹介していきます。
プラスチック製食器類の耐熱試験
まずは一般的な例として、JIS規格(日本産業規格)に基づいたプラスチック製食器類の耐熱試験方法をお伝えします。
試験は長時間一定の温度を保つことができる箱型の機械を用いて行われます。手順や方法は以下の通りです。
- 製品を機械の中に入れて50℃を起点に10℃ずつ温度をあげていく
- 製品に異常(ゆがみ、変形、変色、機能性の変化など)が出た温度を測定する
- 製品に異常が出た温度から10℃引いた温度を耐熱温度として算定する
弁当箱のようにふたと容器がある製品については、それぞれのパーツごとに試験を行う必要があります。
その他さまざまな耐熱試験
ほかにもさまざまな耐熱試験があります。熱を加えた際の膨張を測定する熱膨張率試験や、高温環境でのたわみを測定する荷重たわみ温度試験なども耐熱試験の一種です。ここでは安田精機の試験機を例に挙げて荷重たわみ温度試験を説明します。
荷重たわみ温度試験とは、プラスチックに規定の荷重をかけた状態で温度をあげて、試験片のたわみが一定の数値を超えた温度を測定するための試験です。一般的に高温環境での使用が想定される製品に対して行われることが多い試験方法です。
興味がある方は、こちらのページから試験機の詳細をご覧ください。
まとめ
このページではプラスチックの耐熱温度に焦点を当てて、身近なプラスチック素材の耐熱性や熱に強い素材の紹介を行いました。プラスチック=熱に弱いイメージのイメージは一部の素材に該当することは確かですが、熱に強い性質がある種類も存在することがわかっていただけたかと思います。
安田精機では、これからもみなさんの身近な疑問にお答えしていきたいと思います。気になることがあればTwitterやInstagramでコメントしてみてくださいね。
参考:プラスチックの耐熱性。熱に強い樹脂13選 / プラスチック加工における素材の特徴 ~塩ビ(ポリ塩化ビニル・PVC)編~ / 耐熱性試験とは?目的や試験方法をわかりやすく解説 / 荷重たわみ温度試験(DTUL)とは?ビカット軟化点試験、ボールプレッシャー試験についても解説!