堅ろう度

堅ろう度(堅牢度)という言葉を耳にしたことがありますか? 堅ろう度とは、洋服やタオルやインテリア用品をはじめとする生地の色落ちのしにくさを表す用語です。聞きなれない言葉かもしれませんが、日々の洗濯や日光による変色で服の色が変わってしまった経験がある方が多いように、わたしたちの暮らしに密接に関わる言葉でもあります。

このページでは、堅ろう度に着目して、堅ろう度の用語の説明や生地選びや洗濯時の注意点について解説していきます。色落ちや変色で残念な思いをしないためにも、堅ろう度への理解を深めていきましょう。

堅ろう度とは?

堅ろう度

堅牢(けんろう)は、辞書では「物がしっかりと、壊れにくくできていること」と説明されています。堅ろう度は主に繊維業界で使われる用語で、染色の丈夫さを意味します。色落ちのしにくい生地や色映りがしにくい生地は堅ろう度が高いと表されます。

堅ろう度はJIS規格(日本の工業製品に関する規格)によって、9段階で評価されます。1級〜5級を半刻みにした等級が設けられており、1級が一番堅ろう度が低く(色が変わりやすい)、1→1-2→2→2-3のように数字があがるにつれて色が変わりにくいです。トラブルやクレームを防ぐため、アパレルメーカーでは、商品企画の段階で必ず堅ろう度試験が行われています。

生地の色が変わるメカニズムを知ろう

そもそもなぜ生地の色が変わってしまうのでしょうか。まずは生地の色が変わるメカニズムを紐解いていきましょう。色が変わる現象は大きく分けて2種類のメカニズムが関わっています。それが、「変退色」と「汚色」です。

変退色

変退色は変色と退色を合わせた言葉です。たとえば、洗濯でシャツの色が抜けて薄くなってしまう現象が変退色です。

汚色

汚色は言葉の通り、汚れやすさを表す言葉です。洗濯をしたときに、濃い服の色が薄い色の衣類に移ってしまう現象は汚色によるものです。

堅ろう度の見分け方と取り扱いの注意

堅ろう度

ここからは堅ろう度が高い生地・低い生地の見分け方と取り扱い時の注意事項を説明します。堅ろう度は素材や染められた色によって異なるので、衣類を選ぶ際の参考にしてみてください。

素材による堅ろう度の違い

堅ろう度は素材によって異なります。ポリエステル系の繊維で作られている生地は堅ろう度が高く、天然繊維やナイロン系の生地は堅ろう度が低いです。コットンや麻などで作られたTシャツやタオルなどは色落ちがしやすいので洗濯時には注意が必要です。

色による堅ろう度の違い

同じ素材でも色によって堅ろう度が異なります。たとえば、白っぽいTシャツと黒っぽいTシャツでは、白っぽい薄い色のほうが堅ろう度が高く、黒っぽい濃い色は堅ろう度が低くなります。色が濃い衣類と薄い衣類を分けて洗濯したほうが良いとされているのはこのためです。

生地の選び方や取り扱い時の注意

一般的に4〜5級での堅ろう度があれば、安心して着用したり洗濯したりできる生地だということになります。堅ろう度が3級程度の生地を使用した衣類には、「色落ち注意」「色移りしやすい」「漂白剤禁止」「単独で洗濯」などのタグがつけられています。

堅ろう度が低い生地を取り扱う際は、上記のタグにある注意事項をしっかり守ることが重要です。色を長持ちさせたり、ほかの衣類への色映りを避けたりするためには、注意書きを守って取り扱うようにしてください。

基本的には色が変わりにくい衣類を選ぶのが生地選びのポイントですが、あえて堅ろう度が低い生地を選んで色落ちや風合いを楽しむ方法もあります。代表的なアイテムがデニムです。色落ちした独特の味わいを楽しみたい際は、堅ろう度3程度の生地を選ぶのもオススメです。

堅ろう度の試験方法

堅ろう度

生地の色が変わる原因には、洗濯、汗、摩擦、日光、温度、プリントの剥離などのさまざまな原因があります。それぞれ原因を分けて正確に評価するため、堅ろう度試験はさまざま種類に分かれており、JISにも複数の試験方法が記載されています。以下に一部を紹介します。

JISL0801 染色堅ろう度試験方法通則
JISL0841 日光に対する染色堅ろう度試験方法
JISL0844 洗濯に対する染色堅ろう度試験方法
JISL0845 熱湯に対する染色堅ろう度試験方法
JISL0848 汗に対する染色堅ろう度試験方法
JISL0849 摩擦に対する染色堅ろう度試験方法
JISL0860 ドライクリーニングに対する染色堅ろう度試験方法

試験方法はどれも単純で、試験名からも想像ができるように、生地を洗濯したり日光に当てたり擦ったりして、試験前と後の色の変化を測定します。

染色堅ろう度試験では、目視で色の変化を判定する視感法が一般的な評価の算出方法です。生地を目視する際には「グレースケール」という基準物を用います。試験前と試験後の生地を見比べて、グレースケールを基準に等級が決定されます。

堅ろう度

安田精機の試験機にも、染色堅ろう度を測定するための機械があります。No.428 学振形摩擦試験機(摩擦試験機Ⅱ形)は「JISL0849 摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」の試験を行う試験機です。こちらのページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

まとめ

堅ろう度

この記事では、布類の色の変わりにくさを表す堅ろう度について解説をしました。色落ちや色移りなど多くの人が暮らしの中で経験している現象も、試験で数値化されていることがおわかりいただけたかと思います。大切な衣類の変色を防いだり、あえて色の変化を楽しんだり、みなさんの生活に役立てていただけるとうれしいです。

参考:繊維の用語 染色の丈夫さを示す『堅牢度』とは 生地の堅牢度とは?布を取り扱うなら覚えておきたい染色堅牢度の知識摩擦堅ろう度試験(JIS L 0849)とは?試験方法を解説します!