「摩擦堅ろう度(堅牢度)試験」とは、衣服同士のこすれによる色移り・色落ち(変色)のしにくさを測定する試験です。濃い色の服を着ている時や革製品を使用している時に、摩擦でほかの洋服へ色移りした経験はありませんか?摩擦堅ろう度試験は、こうした衣服の摩擦によるトラブルを防ぐために実施されます。

また、この試験は繊維だけでなく、様々な材料を対象に行われています。プラスチックの食品梱包や段ボールが代表的な例の1つです。配送中に摩擦などで印字が消えることがあり、耐摩擦性(耐擦過性)が重要になるため、試験が実施されています。また、最近では自動車の内外装に使用される、装飾(加飾)部品表面の耐摩擦性評価にも応用されています。

堅ろう度試験の様子(摩擦試験機Ⅱ形 学振形)

堅ろう度とは

堅ろう度とは、染色された繊維製品の色の抵抗性のことです。染色堅ろう度とも呼ばれ、洗濯・摩擦・光など外的要因による色移りや色落ち(変色)のしにくさのことを指します。堅ろう度には、「汚染」と「変色」の2種類があります。

染色堅ろう度の用語 意味
変退色 色相、明度及び彩度を総合した色の変化のこと。(変色や退色のこと)
汚染 染料などが添付白布に移行すること。(色移りのこと)

洗濯前後でTシャツの色が抜け、色が変わることを「変退色」、Tシャツの色がほかの衣服に色移りすることを「汚染」といいます。
堅ろう度は、JIS規格に基づき、洗濯・摩擦・光などによる変退色のしやすさで評価します。結果は1級~5級を半階級刻みにした9段階で表し、数値が大きいほど染色に対して堅ろう性が高いということになります。この等級は、試験前後の色の変化から判定することができます。

摩擦堅ろう度試験について

試験方法は、下記2種類の試験方法があります。

  • 摩擦試験機I形(クロックメーター)法
  • 摩擦試験機Ⅱ形(学振形)法

ここでは、使用されることが多い「摩擦試験機Ⅱ形(学振形)法」について解説します。

摩擦試験機Ⅱ形(学振形)装置概要

試験片台、摩擦子、荷重腕、水平往復運動装置などにより構成されます。

  • 試験片台金属製で、表面半径200㎜のかまぼこ形
  • 摩擦子縦約20㎜、横約20㎜、表面半径R45㎜で円筒状の曲面を持つもの。白綿布を固定し、接地面積が約100㎣のもの。
  • 荷重腕一端が固定軸で止められ、摩擦子に2Nの荷重を加えるもの。固定軸中心から摩擦子中心までを110㎜とする。
  • 水平往復運動装置試験片台を毎分30回往復する速度で120㎜の間を水平往復し、摩擦子が100㎜の間で往復できるもの
  • 摩擦用白綿布JIS L 0803に規定する綿3-1号(摩擦用)または綿3-3号。摩擦子を十分に覆う程度の大きさにカットしておく。大きさは50㎜×50㎜または60㎜×60㎜とするのがよい。
摩擦試験機Ⅱ形(学振形)装置概要

試験手順

  1. 試験片(縦約220㎜×横約30㎜)を試験片台に、白綿布を摩擦子の先端に取り付ける。
  2. 2Nの荷重で試験片中央部100㎜の間を毎分30回往復の速度で100回往復摩擦する。
  3. 試験終了後、試験片の変化や白綿布への着色から、等級の判定を行う。
摩擦堅ろう度試験

結果判定

判定方法

試験実施後、JIS L 0801に基づき、染色堅ろう度の判定を行います。判定方法は「視感法」「計器法」の2種類があり、ここでは一般的に用いられる「視感法」について説明します。
視感法とは目視による判定方法です。グレースケールという基準物を使用し、試験前後の試験片の色の違いに基づいて判定を行います。試験前後の色の違いをグレースケールと比較し、最も近いグレースケールの番号をその試験片の等級とします。また、この判定は、試験片の変退色と白布への汚染それぞれで行います。

等級について

染色堅牢度の等級は、1級から5級までを半階級刻みの合計9段階で表します。5級が1番堅ろう性が高く、1に近づくほど低くなります。

変退色用グレースケール

視感法の判定手順

  1. 試験前後の試験片、または試験前後の白綿布を、隣り合わせで灰色下敷きの上に並べる。その傍らにグレースケールを置く。
  2. 試験片と変退色グレースケール、および白綿布と汚染用グレースケールとの比較をする。その際、試験片を45°に保持し、上方から照明して、試料に対し90°の方向から観察する。
  3. 試験前後の試験片または白綿布の色の違いの大きさをグレースケールと比較し、最も近いグレースケールの番号で等級付けを行う。

※汚染の判定の場合、試験に使用した白綿布全ての判定を行い、縫い目の汚染は無視する。

摩擦試験機Ⅰ形(クロックメータ)法について

ここでは、摩擦試験機Ⅰ形(クロックメータ)法について解説します。摩擦試験機Ⅱ形(学振形)法とは異なり、試験片台・摩擦子ともに平面状のものを使用して試験を行います。

No.416 クロックメータ(摩擦試験機Ⅰ形)

No.416 クロックメータ(摩擦試験機Ⅰ形)

試験手順

  1. 試験片(縦約140㎜×横約50㎜)を試験片台の耐水研磨紙上に取り付ける。
  2. 摩擦子に先端に白綿布を取り付ける。
  3. 9N±0.2Nの荷重で、試験片100㎜の間を10秒間に平均10回往復摩擦する。

※判定は、摩擦試験機Ⅱ形と同じくJIS L 0801による。

安田精機の試験機:No.428 学振形摩擦試験機(摩擦試験機Ⅱ形)

摩擦に対する染色堅ろう度を評価する装置です。試験片台は表面半径200mmのかまぼこ形に加え、平面形も選択が可能です。

関連製品

参考規格

  • JIS K 5701-1(2000)平版インキ-第1部:試験方法
  • JIS L 0849(2013)摩擦に対する染色堅ろう度試験方法
  • JIS L 0801(2011)染色堅ろう度試験方法通則
  • JIS L 0803(2011) 染色堅ろう度試験用添付白布
  • JIS L 0804(2004)変退色用グレースケール
  • JIS L 0805(2005)汚染用グレースケール
  • JIS L 1084(2009)フロック加工生地試験方法
  • JIS K 6404-16(1999)ゴム引布・プラスチック引布試験方法−第 16部:染色摩擦竪ろう度試験
  • JIS K 6559-1(2017)革試験方法-染色堅ろう度試験-摩擦に対する染色堅ろう度試験-第1部:摩擦試験機I形法
  • JIS K 6559-2(2017)革試験方法-染色堅ろう度試験-摩擦に対する染色堅ろう度試験-第2部:摩擦試験機Ⅱ形法
  • JIS K 6772(1994)ビニルレザークロス
  • JIS P 8136(1994)板紙の耐摩耗強さ試験方法