再生樹脂は廃棄されたプラスチックをリサイクルして作られたプラスチック素材です。新たに石油を使用することなく製品を製造できるため、環境に配慮したサスティナブルな材料として評価が高まっています。
今回は再生樹脂の中でも特に注目を集めている木材・プラスチック再生複合材(WPRC)に焦点を当てて性能や特徴を解説していきます。
<目次>
木材・プラスチック再生複合材(WPRC)は環境に配慮した再生樹脂
木材・プラスチック再生複合材(WPRC)は、木粉とプラスチックを原料とする再生樹脂の一つです。木材もプラスチックもどちらも廃棄されるものや不要なものをリサイクルして使われているため、環境性能の高さが特徴です。また、木材とプラスチック材の特徴を併せ持っていることから、材料自体の性能の高さも認められています。
プラスチックのリサイクルは3パターンに分けられる
一言でリサイクルと言っても、リサイクル後にどのように使用されるかによって3パターンに分けられます。
【プラスチックの3パターンのリサイクル】
- マテリアルリサイクル:再びプラスチックなどの材料として使用する
- ケミカルリサイクル:分解して別の素材の原料として使用する
- サーマルリサイクル:燃やして熱エネルギーとして使用する
再生樹脂はマテリアルリサイクルの製品であり、資源やエネルギー問題に対応するための大きな役割を果たす生産手段の一つです。
日本のプラスチックリサイクル事情
日本のリサイクル事情を簡単に説明します。日本は他国に比べ、プラスチックのリサイクル率が低い水準の国です。とくにマテリアルリサイクルで他国に遅れを取っています。原因は、ごみの焼却が広く行われており、設備費や人件費が高価なリサイクル処理は、プラスチックを輸出することで対応してきたためです。
しかし、2021年にはプラスチック廃棄物の輸出が規制対象になります。これまで主に中国に輸出していた廃プラスチックは行き場がなくなりました。プラスチック輸出大国であった日本は、リサイクルの国内循環に目を向けざるを得なくなったというわけです。
そんな中、プラスチックリサイクルによる再生樹脂の使用を推進して環境負荷の少ない生産や消費に取り組む企業も多く見られるようになりました。再生樹脂の使用が高まり、新しい素材が次々に開発されています。
環境性能の高さに注目が集まる
再生樹脂の中でも、環境性能の高さが評価されているのが木材・プラスチック再生複合材(WPRC)です。リサイクル材から作られていること以外にも、以下のような環境負荷に配慮した面があります。
【木材・プラスチック再生複合材の環境性能】
- 多回リサイクルができる
- 二酸化炭素(炭素)が貯蔵できる
- 林地残材を有効利用している
それぞれ詳しく説明します。
多回リサイクルができる
木材・プラスチック再生複合材は、使用後に再度回収し原料として再生できます。この性質は多回リサイクル性と呼ばれています。何度もリサイクルができるシステムの実現で、廃棄物の量を抑え、新規資材の採集量を減らすことができます。
炭素貯蔵機能がある
炭素貯蔵機能とは、森林や木材が持つ環境性能の一つです。光合成により大気中の二酸化炭素を吸収した木は、伐採されて木材として使用されている間も、木材の中に炭素が貯めておける性質があります。廃棄されて燃やされるまで二酸化炭素が放出されることはないため、木材は「炭素の缶詰」と呼ばれる材料です
木材・プラスチック再生複合材は、原料の約半分が木材です。そのため木材の炭素貯蔵機能を引き継いでいます。再生樹脂の中でも、より環境に配慮した原料として評価されるのはそのためです。
林地残材を有効利用している
林地残材とは、人工林の間伐をした際に林の中に放置される木を指します。曲がっていて木材として使用することが難しい間伐材は、木材・プラスチック再生複合材の原材料として使用されています。
林地残材を有効利用すれば、跡地に新しく植樹することができるため、プラスチック再生の枠を越えて資源の循環に貢献することにつながります。
性能や特徴
高い環境性能を誇る再生樹脂は、素材としての性能や特徴も優れています。木材とプラスチック材の両方の性質を併せ持ち、欠点を補いあうように構成されているためです。木材とプラスチック材の配合の割合を操作することで、用途に合わせて特定の性質を強めることもできるとされています。材料の性質の特徴は主に次の3点です。
【木材・プラスチック再生複合材の特徴】
- 耐久性が高い
- 安全性が高い
- メンテナンスがしやすい
耐久性が高い
木材・プラスチック再生複合材は、木材に比べて腐りにくく、耐久性が高い性質を有しています。乾燥による収縮も少なく、性能が安定しているといえます。
またプラスチックに比べて、耐熱性が高く、剛性も優れているのも特徴です。木質感があるので、ウッドデッキの材料として使われることが多いです。
安全性が高い
ホルムアルデヒドの放出量や有害物質溶出量などに関する安全基準を満たした素材です。またトゲやささくれが発生しないので、子どもが利用する施設(保育園や遊具など)で使用されるシーンも見られます。
メンテナンスがしやすい
木材と比較して、寿命が長い素材であるため、メンテナンスしやすくコストが抑えられます。経済的な観点からも評価される素材であるといえます。
サスティナブルな材料で地球に優しく
再生樹脂は需要や注目の高まりとともに日々進化しています。原料の100%が、市場に流通した商品の回収によるポストコンシューマー材で作られている材料や、より安定性の高い樹脂など、新しい樹脂素材が誕生しています。
限りある資源を未来に残すため、企業や個人にサスティナブルな取り組みが広がっています。ものづくりを担う製造業界でも、あらゆる方面から施策が進められている最中です。これからも新しい情報をどんどんお届けしていきますので、楽しみにしていてください。
参考:木材・プラスチック再生複合材(Wikipedia) / プラスチックのリサイクルの種類は?現状と企業の取り組み事例も解説 / WPRCの環境性能 / Kotex 高品質リサイクルグレード