「校正(こうせい)」と聞くとどんな作業が思い浮かびますか? 聞きなれない言葉だと感じる方も多いかもしれません。校正は製品の品質保証に欠かせない試験で、長さや重さを測定する計測ツールが正確に数値を計測できるかどうかを確認する作業を指します。
「修理」や「メンテナンス」と同じように扱われることが多い「校正」ですが、作業の目的や役割が大きく異なります。このページでは品質保証に欠かせない校正について、試験機メーカーの視点から解説していきます。校正の必要性や、数値の正しさを追求するメーカーのこだわりを感じていただきたいです。
<目次>
校正はなぜ必要?修理やメンテナンスとの違い
校正とは、計測器が正しく計測できているかどうかを確認する試験のことです。たとえば、長さや重さを測るとき、定規や秤が示す値が正確でなければ、対象の正確な数値はわかりません。つまり校正は、正しく数値を測るために、天秤や秤や試験機などの計測ツールが示す数値の正確性を確かめる作業のことです。
修理やメンテナンスとひとまとめに扱われることもありますが、それらの作業とは方法や役割が異なります。具体例を用いて解説します。
【校正・修理・メンテナンスの違い】
定規で1cmの長さを測りたい!
■校正:定規が示す「1cm」の目盛りは1.1cmでも0.9cmでもなく正確な「1cm」なのか?
→標準となる機械や数値と比べて確かめる
■修理:定規が欠けていて長さが測れない
→欠けている部分を直して使える状態にする
■メンテナンス:定規が汚れて目盛りが読み取れない
→汚れを取って目盛りを読みやすくする
計測器で正しく測定できるかどうかは、計測器で測定した製品の品質や性能が保証できるかに関わります。修理やメンテナンスと併せて校正を定期的に行うことで、計測器の質が保たれ、結果的に製品の信用性も高まるというわけです。
校正結果を示す3つの証明書を解説
ここまでの章で計測器や試験機で正しい数値を測定するためには校正が必要不可欠であることを説明しました。校正の結果は「校正証明書」「トレーサビリティ体系表」「検査成績書」の3点の書類で示されることが一般的です。
それぞれの書類の意味と、正確な校正のために必要なポイントを試験機メーカーの視点で紐解いていきます。
校正証明書:校正結果の総合判定や期日を示す
校正証明書には、一般的に校正結果の総合判定・校正の期限・校正に使用した標準機器の型式や品名や校正期限が明記されます。
試験機が校正済みであることは、正しい試験が行われることの裏付けになります。試験結果や測定値が正確でなければ、品質を保証することはできません。
トレーサビリティ体系表:標準器が国家標準を満たしているかどうか
校正は「標準器」と呼ばれる校正のための機器を用いて行われます。トレーサビリティ体系表とは校正で用いられる「標準器」の精度が確立されていることの証明書です。
トレーサビリティとは、標準器が示す値が国家標準や国際標準の値とズレがないか比較がなされているかどうかを指します。トレースは「追跡」を意味する言葉で、トレーサビリティ体系表は校正に使用した標準器が国家や国際標準まで追跡できるかどうかの経路をチャート図で示した表です。トレーサビリティが確立されていることは、校正結果の質を保証することにつながります。
検査成績書:校正結果の値を示す
検査成績書は、校正結果の数値を示す書類で、製品ごとに指示値・校正値などの数値が記録されています。指示値とは校正の対象となる計測器が示した数値、校正値は校正に用いた標準器が示した数値です。校正結果の合否は、指示値と校正値間の「誤差」で判断されます。
ただし産業技術総合研究所では、「誤差」ではなく測定の「不確かさ」という言葉を用いて、測定結果の質を保証しようという考えが提唱されています。
「不確かさ」とは、測定結果は対象量の値の近似値・推定値でしかないという主張に基づきます。たとえば、秤で100gの砂糖を測るとき、同じ量を測っているはずなのに「99g、101g、100.5g・・・」と何度か測っているうちに測定の結果がばらつくことがあります。なぜ同じ結果にならないかは、部屋の温度が原因なのか、秤の目盛りがズレているのか、正確には判断ができません。
その数値のばらつきを「誤差」とせず、測定回数・測定環境など複数の要因が絡んだ結果とし、各ばらつきの要因ごとの値を調査し、全体のばらつきの値として求めようとするのが「不確かさ」です。
「真の値」との差異に着目する誤差とは異なり、結果がばらつく=測定結果は対象物の近似値でしかないとする考え方が優位で、「不確かさ」を算出することでより結果の質が保障されると考えられています。
安田精機の校正:試験機メーカーの校正の強み
安田精機は試験機メーカーとして、お客様が正確な試験を行えるよう校正サービスに力を入れています。校正に用いる機器は全てトレーサビリティを取得しているので、安心してお任せください。校正終了時には「校正証明書」「トレーサビリティ体系表」「検査成績書」の3点をお渡ししています。
また、校正の際には、試験機の点検。調整を実施。安心して試験機を試用していただくために、メンテナンスを含めた年次の校正をおすすめしています。定期的な校正は大事な製品の品質を保証し、顧客の信頼獲得につながります。ぜひご検討ください。
品質を保証するために定期的な校正をしましょう
このページでは計測器の「校正」について、校正の必要性や校正結果の質について説明しました。正確さを追跡する「トレーサビリティ」、わたしたちが測定できる数値には限界があるとする「不確かさ」など、品質保証のために正確さを追求する人々の姿が垣間見えるのではないでしょうか。
安田精機でも試験機メーカーとして、製品の品質に責任を持って日々の業務に取り組んでいます。校正のご相談もお気軽にお申し付けください。