燃焼性試験とは、プラスチック材料における燃えにくさの度合い(難燃性)を判定する試験です。プラスチックは、電化製品や自動車部品、医療用部品などに多用されています。難燃性は、こういった製品の安全性を保つために、非常に重要な評価指標の1つです。この記事では、難燃グレードや具体的な試験方法について解説していきます。

難燃グレードとは?

難燃グレード

難燃グレードとは、プラスチック材料の燃えにくさ(難燃性)の等級を示すものです。一般的に、UL規格の試験方法で評価されます。
UL94規格に基づく一般的な材料の難燃性は、難燃性が高い(燃えにくい)順に5V-AからHBまでの6つの等級に分けられます
等級は、試験を行い、燃焼速度、接炎後の残炎時間、滴下物での着火有無などから判定することができます。HBは自己消火性がなく、1度着火すれば最後まで燃焼し、5V-AからV-2は自己消火性があるため、炎が離れると火が消えます。家電製品で難燃性の材料を使用する場合は、V-0以上が望ましいとされています。5V-Aと5V-Bは最高レベルの難燃性能ですが、通常の用途でこのレベルが求められることは少ないです。

【各グレードに分類される代表的な材料】

グレード 代表的な材料
V-0 PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PI(ポリイミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
V-1 変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)、PPO(ポリフェニレンオキサイド)
V-2 PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)
HB PE(ポリエチレン)

UL94規格の燃焼性試験について

試験機の構成

試験機は、試験チャンバー、バーナー、マノメーター、流量計、リングスタンド、バーナー炎の校正機器などで構成されます。

  • 試験チャンバー少なくとも0.5㎥の内容積を有し、試験経過が観察できるもの。かつ、燃焼している間、試験片を通り越す空気の正常な熱循環を可能にするような通気を妨げないもの。内面は暗色で、照度は20ルクス未満でなければならない。また、燃焼生成物を取り除くための換気装置を取り付けることが望ましい。※燃焼時間が長引くとき、1㎥未満のチャンバー寸法では正確な結果を一貫して得られない。
  • バーナー長さ100±10㎜、内径9.5±0.3㎜の管を持つもの。ASTMD5025に適合しなければならない。
  • マノメータ(U字管圧力計)/圧力計5㎜刻みで200㎜までの水を測定できる計器。
  • 流量計JIS D3195「ロタメータ校正法」に基づいて校正されたロタメータ(浮子式流量計)であって、ガスに適した相関曲線を有するもの、または少なくとも±2%の精度を有する質量流量計。
  • リングスタンド試験片、金網を水平または垂直に置くためのクランプまたはそれと同等のものを伴うもの。
  • バーナー炎の校正機器校正用熱電対、校正装置を用いる。熱電対はASTM E608に従ったステンレス鋼シースを備えたK熱電対であること。

試験方法

燃焼性試験は、等級により3種類の試験に分かれています。

  • ①HB:水平燃焼性試験
  • ②V-0/V-1/V-2:50W(20㎜)垂直燃焼試験
  • ③5V-A/5V-B:500W(125㎜)垂直燃焼試験

それでは具体的にどのような試験を行っているのか、紹介していきます。

①HB:水平燃焼試験

HB:水平燃焼試験

試験手順

  1. 試験片(長さ125±5㎜、幅13.0±0.5㎜)の試験片を3枚用意し、25±1㎜100±1㎜の位置に標線を引く。
  2. 試験片の一端を固定し、長軸を水平に、短軸は45±2°傾斜させる。試験片の10±1㎜下に金網を設置する。
  3. 保持していない方の端に、青色炎(長さ20±1㎜)を45±2°の角度で30±1秒間接炎させる。
  4. 30秒の接炎後、または接炎中に燃焼する先端が25㎜の標線に達した場合、ただちにバーナーを試験片から遠ざける。燃焼する先端が25㎜に到達した時点から時間を測りはじめる。
  5. 標線間75㎜の燃焼時間を測定し、燃焼速度を算出する。※燃焼が100㎜の標線に達しなかった場合、燃焼した距離と時間から燃焼速度を求める

判定基準

下記に該当する場合、難燃グレードは「HB」と判定されます。

試験片の厚さ 認定基準(燃焼速度)
3.0〜13mm 40mm/min以下
3.0mm未満 75mm/min以下
100mmの識別マークに達する前に燃焼が止まる

②V-0/V-1/V-2:50W(20㎜)垂直燃焼試験

垂直燃焼試験V-0/V-1/V-2

試験手順

  1. 試験片(長さ125±5㎜ × 幅13.0±0.5㎜)の上端6㎜の所を固定し、垂直に保持する
  2. バーナーを300㎜/秒の割合で、試験片の幅が広い面から水平に近づける。バーナーの先端が試験片の下端より下10±1mmになるように、10±0.5秒間接炎させる。
  3. 接炎後、バーナーを300㎜/秒の速さで150㎜以上遠ざけ、同時に残炎時間を測定する。※試験片が縮んだりゆがんだりする場合は、適切な位置にバーナーを移動させる。※材料が滴下する場合はバーナーを45±5℃に傾けて試験を行う。
  4. 燃焼が止まったら、直ちにバーナーを試料の下に持ってくる。試験片の残り部分から下10±1㎜になるように10±0.5秒間接炎させ、残炎時間および赤熱時間を測定する

判定基準

試験結果に基づき、それぞれV-0、V-1、V-2に分類されます。

判定基準 グレード
V-0 V-1 V-2
各試験片の1回目または2回目の残炎時間 10秒以下 30秒以下 30秒以下
2回目の接炎後の残炎時間と赤熱時間の合計 30秒以下 60秒以下 60秒以下
試験片5本の合計残炎時間 50秒以下 250秒以下 250秒以下
燃焼物質が燃焼滴下物によるワタの着火有無 なし なし あり
クランプ(固定器具)までの燃焼または赤熱の有無 なし なし なし

③5V-A/5V-B:500W(125㎜)垂直燃焼試験

【短冊状試験片】

垂直燃焼試験5V-A/5V-B

短冊状試験片の試験手順

  1. 試験片(長さ125±5㎜ × 幅13.0±0.5㎜)の上端6㎜の所を固定し、垂直に保持する。試験片下端が、吸水性のあるワタ(約50㎜×50㎜×6㎜)から300㎜±10㎜上方になるようにする。
  2. 炎を試験片の下端に、垂直に対し20±5°の角度であて、青色炎の先端が試験片の端から0~3㎜以内になるようにする。
  3. 5秒間接炎し、5秒遠ざける作業を5回繰り返す。

【平板状試験片】

垂直燃焼試験5V-A/5V-B

平板状試験片の試験手順

  1. 試験片(長さ150±5mm × 幅150±5mm)をクランプに取り付け、水平に保持する
  2. 炎を試験片の中心に、垂直に対して20±5°の角度であて、青色炎の先端が試験片の端から0~3㎜以内になるようにする。
  3. 5秒間接炎し、5秒遠ざける作業を5回繰り返す。
  4. 試験片に穴が開いたかどうかを確認する

判定基準

短冊状試験片および平板状試験片それぞれで得られた試験結果に基づき、5V-A、5V-Bに分類されます。

判定基準 グレード
5V-A 5V-B
短冊状試験片 5回目の接炎後の残炎時間と赤熱時間の合計 60秒以下 60秒以下
試験片からの有炎物質または有炎落下物による、ワタの着火有無 なし なし
平板状試験片 接炎後の穴の有無 なし あり

バーナー炎の校正について

バーナー炎の校正は下記の方法で行います。

  1. 熱電対を校正装置に接続し、クランプからスラグ先端までが75㎜以上になるよう、熱電対を固定する。スラグ先端からバーナーまでの距離は、50W(20㎜)試験の場合は10±1㎜、500W(125㎜)試験の場合は55±1㎜とする。
  2. バーナーに点火し、規格に基づき炎を調整する。
  3. スラグの下にバーナーを移動させ、スラグが100℃から700℃になるまでの時間を測定する。温度が規定値に達したら、速やかに炎をスラグから離す。
  4. 上記手順で、合計3回測定する。100±2℃から700±3℃に到達するまでの時間は、50W(20㎜)試験の場合は44±2秒、500W(125㎜)試験の場合は54±2秒の範囲でなければならない。※加熱時間が規定値にならない場合は、バーナーを点検または交換してください。
バーナー炎の校正

FMVSS燃焼性試験について

FMVSS燃焼性試験とは、自動車の内装材料の耐火性を評価する試験です。火災が発生した際、燃え広がりやすい素材を使用していると重大な事故につながるため、この試験を行う必要があります。

試験内容

試験片(350×100×t mm)をU字型の取付具に固定し、接炎箇所から38㎜をA標線、292㎜をB標線とする。試験片を水平に保持し、試験片に15秒接炎して標線間254mmの燃焼速度を測定します

FMVSS燃焼試験

UL-1581 ケーブル燃焼性試験について

UL-1581は電線のケーブルの燃焼性を評価する試験です。電線やケーブルの被膜の大部分はゴムやプラスチックなどの高分子材料で構成されています。火災の際、ケーブルが炎を伝搬し火災を拡大する恐れがあるため、ケーブルには難燃性が求められることがあります。

試験内容

  • 水平燃焼試験

    水平に保持した試験片に30秒間接炎し、その難燃性(延焼性、落下物)を評価します。

    UL-1581の水平燃焼試験
  • 垂直燃焼試験

    垂直に保持した試験片に15秒間×5回接炎し、その難燃性(残炎時間、延焼性、落下物)を評価します。

    UL-1581の垂直燃焼試験
  • 垂直トレイ試験

    垂直トレイ上に試験片を指定本数設置する。20分間接炎し、その難燃性(延焼性)を評価します。

    UL-1581の垂直トレイ試験

安田精機の燃焼性試験機

安田精機の燃焼性試験機は手動と電動の2タイプがあり、ともに水平燃焼試験(HB)や垂直燃焼試験(V)を行うことができます。その他の燃焼試験(5V、VTM、HBF、HF)についても、オプションの支持冶具を使用することで対応可能です。

※設置環境の利便性を考慮し、チャンバー寸法は0.5㎥を標準としております。1.0㎥の実績もございますので、ご相談ください。

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65年以上の長きに亘り、産業分野に対し品質管理及び研究開発をサポートしてきた安田精機の試験機は、御社の多様なニーズにお応えいたします。

参考規格

  • UL94(2023)安全規格機器及び部品に使用されるプラスチック材料の燃焼性試験
  • JIS K 6911(2006)熱硬化性プラスチック一般試験方法
  • ASTM D635(2022)Standard Test Method for Rate of Burning and/or Extent and Time of Burning of Plastics in a Horizontal Position
  • UL1581(2021)Reference Standard for Electrical Wires, Cables, and Flexible Cords
  • ASTM D5025(2020)Standard Specification for Laboratory Burner Used for Small-Scale Burning Tests on Plastic Materials
  • FMVSS 302(2003)自動車内装材料の燃焼性試験