紙幣など、繰り返し折りたたんだり広げたりした紙が、折り目で破れてしまった経験はありませんか?
私たちが日常的に使っている紙は、こういった往復の折り曲げに対する強度(耐折強さ)が重要です。折り曲げに対する強度(耐折強さ)は、「MIT試験機法」で測定することができます。また、この試験は紙だけでなく、プラスチックフィルムや、携帯やノートパソコンに利用されるフレキシブル基盤(FPC)などの試験にも使われています。

耐折強さ試験について

耐折強さ試験には、下記の2種類があります。

  • MIT試験機法(JIS P 8115、JIS C 5016)
  • ショッパー試験機法(JIS P 8114)

ここでは、主流のMIT試験機法について解説していきます。

MIT試験機法

規定の荷重を掛けて試験片を引っ張りながら、左右135°に規定の速さで折り曲げ、試験片が破断するまでの回数を測定します。

装置概要

装置はばね荷重クランプ、折り曲げクランプ、カウンタなどから構成されます。

  • ばね荷重クランプ

    規定の荷重をばね荷重クランプに容易に加えることができるもの。

  • 折り曲げクランプ

    試験片を左右へ135±2℃の角度に折り曲げるもの。折り曲げ面は個別規格に規定される曲率半径(JIS P 8115では0.38±0.02mm)。開口部と試験片とのすき間は0.25mm以下。

  • カウンタ

    試験片の往復折曲げ回数を記録するもの。
    ※試験機に付属している場合が多い

MIT試験機装置概要 MIT試験機の一例

試験条件

サンプルが紙の場合(JIS P 8115)とFPCの場合(JIS C 5016)の試験条件の違いは下記の通りです。

JIS P 8115 JIS C 5016
荷重 9.8 N 4.9 N
曲率半径 0.38±0.02 mm 個別規格に準ずる
折り曲げ速度 毎分175±10回 毎分170回程度
試験片 寸法:幅 15.0±0.1 mm、長さ 約110 mm
枚数:各10枚以上
寸法:記載なし
枚数:カバーレイを施したものを6枚以上
試験内容 試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を記録する。 試料が断線するまでの往復折り曲げ回数を記録する。

試験方法

MIT試験手順

試験手順

  1. 適切な荷重を加え、プランジャをその位置にとめてねじで固定する。
  2. 試験片が一平面状になるように、上下のクランプに取り付ける。試験片下端は回転軸の下9.5㎜の位置で固定する。取り付ける際は、折り曲げ部分に触れないように両端を持って行う。
  3. プランジャのねじを緩め、試験片に荷重を加える。
  4. 試験片を規定される速度で折り曲げ、試験片が破断または断線するまでの回数を測定する。

結果判定

試験片が破断・断線するまでの往復折り曲げ回数(耐折回数)を記録する。

耐折強さ試験の様子(MIT形耐折度試験機)

フレキシブル基板(FPC)について

フレキシブル基板

フレキシブル基板(FPC)とは、薄いプラスチックフィルムの上に回路を形成したプリント基板のことです。非常に薄くて柔らかいため、自由に曲げることができます。そのため、部品間のわずかなすき間や、屈曲部にも配線が可能です。
また、硬いボード状の基板と比較すると、非常に軽量であることも特徴の一つです。これらの特徴を活かし、FPCはスマホやパソコンなど、あらゆる電子機器に使われており、製品の小型軽量化・高機能化に貢献しています。また、近年では自動車の電装化に伴い、FPCを自動車で採用するケースも増加しています。
FPCは、特に柔軟性が重要とされ、前項で紹介した耐折強さ試験だけではなく、屈曲試験も行われることがあります。

屈曲試験

FPCを屈曲させた状態で可動板を繰り返し往復運動させる試験方法です。FPCの導体抵抗を試験前後で測定し、導体抵抗の変化を観察します。

MIT屈曲試験

紙の強度を測定する試験

紙の強度を測定する試験は、耐折強さ試験の他にもいくつか存在します。

  • 引張強さ

    規定:JIS P 8113
    紙を引っ張り、破断するまでの最大荷重値を測定して引張強さを算出します。

  • 破裂強さ

    規定:JIS P 8112
    紙の破裂に対する強さを測定します。試験片を規定の速度で加圧して、試験片が破れた時の最大圧力を破裂強さとします。

  • 引裂強さ

    規定:JIS P 8116
    切れ目を入れた試験片を引き裂くのに必要な力を測定し、紙の引裂強さを求めます。

安田精機の試験機:No.307 MIT形耐折度試験機

関連製品

参考規格

  • JIS P 8112(2008)紙 – 破裂強さ試験方法
  • JIS P 8113(2006)紙及び板紙 – 引張特性の試験方法-第2部
  • JIS P 8112(2008)紙 – 破裂強さ試験方法
  • JIS P 8114(2003)紙及び板紙 ― 耐折強さ試験方法―ショッパー試験機法
  • JIS P 8115(2001)紙及び板紙 – 耐折強さ試験方法-MIT試験機法
  • JIS P 8116(2000)紙 – 引裂強さ試験方法−エルメンドルフ形引裂試験機法
  • JIS C 5016(1994)フレキシブルプリント配線板試験方法

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