スマートフォンや自動車など、日常の様々な製品に塗装が施されています。スマホを地面に落とした時、角がへこんで塗装が剝げてしまった経験はありませんか?このように、塗料が衝撃を受けると割れやはがれがおきることがあります。塗膜には、製品を美しく見せる以外にも、製品を衝撃などから守る役割があり、製品の品質を保つために塗膜の耐久性も重要になります。
今回ご紹介するデュポン式落下衝撃試験は、塗膜の耐久性を測定する試験です。おもりを落下させ、塗膜が変形する時の割れやはがれの有無から評価を行います。また、おもり落下による衝撃試験は3種類あり、それぞれの試験内容についても説明していきます。
おもり落下性試験とは
おもり落下性試験とは、塗料およびその関連製品の乾燥塗膜が、規定の条件下でおもり落下によって変形するときの割れやはがれを評価する試験です。試験は次の3種類があります。
- デュポン式
- 落体式
- 落球式
それぞれの概要について説明していきます!
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デュポン式
先端が丸い円柱状のおもりを外筒にそって落下させます。撃ち型と受け台のすき間がないので、衝撃と変形を同時に与えた場合の抵抗性(耐久性)を評価します。自動車のプラスチックシートなどの試験を行うこともあります。
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落体式
先端が丸い円柱状のおもりを外筒にそって落下させ、塗膜の曲げや伸びに対する抵抗性(耐久性)を評価します。デュポン式と異なり、撃ち型と受け台の間に35㎜のすき間があります。
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落球式
塗膜の表面に一定の高さから鋼球を落とし、塗膜の衝撃抵抗性を評価します。素地の変形が極めて少ないときに用いられます。材料をはじめ、スマホや携帯ゲーム機などのモバイル端末、フロントガラスなどの製品でも試験が実施される場合があります。
デュポン式 試験方法
装置概要
先端に一定の丸みを持つ撃ち型、その丸みに合うくぼみをもつ受け台、おもりを一定の高さから落下させる装置から構成される。試験片は試験板2枚の片面に、試料の規格で指定された方法で塗装・乾燥させた後、室温で1時間放置したものとする。
試験手順
- 半径(6.35±0.03㎜)の撃ち型と受け台を取り付ける。
- 試験片の塗面を上向きにして、撃ち型と受け台の間に挟む。
- ピンを抜き、おもりを試料の規格に規定された高さから、撃ち型の上に落とす。
- 試験片を取り出し、室内に1時間放置する。
- 塗膜の割れ・はがれの有無を目視で確認する。試験片2枚でそれぞれ試験を行う。
結果判定
試験片2枚について、変形による塗膜の割れ・はがれの有無を目視で確認できない場合は、「衝撃による変形で割れ・はがれができない」とする。
落体式 試験方法
装置概要
おもり落下装置は、支持台、落下おもり、垂直外筒、受け台、固定器、止め具などで構成される。
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落下おもり
直径20±3㎜の球状の頭部をもち、全質量は1000±1g。
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垂直外筒
落下おもりを試験片へ垂直に向けるためのもの。外筒内径と落下おもりとの外径の差は0.7±0.1㎜、外筒下端と試験片上面の距離は45㎜以下とする。
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受け台
内径27±0.3㎜のリング状。リングの内部上端は曲率半径0.9±0.2㎜、リング最小高さは20㎜とする。
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固定器
試験片を既定の位置に保持するためのもの。
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止め具
落下おもりの押し込み深さを設定するためのもの。
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観察用レンズ
手持ち型で倍率10倍とする。
試験方法
試験方法は、合否試験と等級付け試験の2つがあります。
合否試験
試験手順
- 試験片に規定の位置からおもりを落下させる。
- 観察用レンズで試験片を観察し、塗膜に割れ・はがれがないか、試験板が割れていないかを確認する。
- 異なる位置で合計5回試験を行う。
結果判定
4回以上の試験で割れ・はがれが認められない場合、合格と報告する。
等級付け試験
試験手順
- 欠陥が生じないと思われる高さからおもりを落下させる。
- 観察用レンズで試験片を観察。
- 割れが観察されるまで25㎜または25㎜の倍数で増やした高さで繰り返し試験を行い、最初に割れが確認された高さを記録する。※装置の最大の高さで割れが生じなければ、おもりを2000gにして同様に試験を実施する。
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割れが確認されたら、下記それぞれの高さで5回ずつ試験を行う。
- 最初に割れが確認された高さ
- 1.から25㎜高い高さ
- 1.から25㎜低い高さ
- 試験片の割れ・はがれを観察用レンズで観察し、15か所すべての結果を表にする。
結果判定
大部分が合格から不合格に変わるおもりの質量・落下高さの組み合わせを結果として報告する。
落球式 試験方法
装置概要
装置はおもり、鋼製台、試験板で構成される。
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おもり
JIS B 1501 で規定される玉軸受用鋼球で、質量300±0.5g、直径25.40㎜、等級60のものを取り付けた下記の図のようなもの。
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鋼製台
縦300㎜×横200㎜×厚さ30㎜以上で、上面は平らなもの。
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試験板
鋼板200×100×4㎜
試験手順
- 塗面を上にして鋼製台の上に固定する。
- おもりは球状の先端を下にし、おもりをつるす糸を固定する。おもりの回転や振れが停止した後、塗料の製品規格で規定される高さから、軸が垂直になるよう糸を静かに離し、塗面におもりを落とす。
- 衝撃を受けた試験片を室内に1時間置いた後、塗面の損傷を調べる。
結果の判定
試験片3枚のうち、2枚以上で塗膜の割れ・はがれを認めない場合、「おもりの衝撃で割れ及びはがれができない」とする。
安田精機の試験機:No.517 デュポン式落下衝撃試験機
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参考規格
- JIS K 5600-5-3(1999) 塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第3節:耐おもり落下性