プラスチックや金属に長時間一定の負荷をかけると、時間とともに物体がゆっくりと変形する「クリープ現象」が発生します。 クリープ試験は、この性質を調べるための試験です。試験片に長時間一定の負荷をかけ、時間ごとの試験片の変形から、時間とひずみ(変形率)の関係を求めます。
例えば、自動車のように何年・何十年と使用するものは、部品や材料に長期間負荷がかかり続けます。負荷に耐えらないと、故障の原因となり、大きな事故に発展するかもしれません。そのため、製品を設計する際にクリープ特性を把握しておくことが非常に重要です。

このページでは、クリープ試験の主な試験方法について解説していきます。

クリープ試験とは

先ほども紹介した通り、クリープ試験とは、試験片に長時間一定の負荷をかけ、時間ごとに試験片の変形を測定し、時間とひずみ(変形率)の関係を求めるものです。

クリープ曲線

試験結果は、上記のような「クリープ曲線」で表します。クリープ曲線は、縦軸にひずみを、横軸に時間を記録し、経過時間ごとの試験片のひずみ(変形率)を示すものです。

通常、クリープは大きく3つの段階に分けられます。
第1期クリープ・・・荷重によって急激にひずみが増加する
第2期クリープ・・・ひずみの増加速度が減少する
第3期クリープ・・・ひずみが再度増加して破断する

第3期クリープで、破断に至らない最大応力を「クリープ限度」といいます。

このように、クリープ試験を実施することで、試験片が時間経過とともにどれくらい変形するかを予測できるようになります。

試験の流れ

試験の流れ
試験の流れ

試験方法について

試験方法は以下の3つです。

  • ①引張クリープ試験
  • ②圧縮クリープ試験
  • ③曲げクリープ試験

引張試験が一般的ですが、目的に応じて圧縮試験・曲げ試験が実施されます。いずれの試験も、試験片に長期間一定の負荷をかけ、時間ごとの試験片の変形からひずみ(変化率)を算出します。
それぞれの試験方法について、具体的に説明していきます。

①引張クリープ試験

一定の負荷でサンプルを引っ張り続ける試験です。時間ごとに標線間距離の伸びを測定し、引張ひずみ(変化率)を算出します。

引張クリープ試験

試験片

タイプ1Aまたはタイプ1Bの多目的試験片。直接成形の場合は1A(全長170㎜)を、機械加工の場合1B(全長~150㎜)を使用します。

多目的試験片タイプ1A
多目的試験片タイプ1B

引張ひずみの計算方法

引張ひずみとは、物体を引っ張った時の伸び率(変化率)のことです。引張ひずみは下記の式で算出します。

引張ひずみの計算方法
引張ひずみの計算記号

②圧縮クリープ試験

試験片に一定の圧縮負荷をかけ続ける試験です。時間ごとに厚みを測定し、圧縮ひずみ(圧縮率)を算出します。

圧縮クリープ試験

試験片

応力を受ける面が25㎤以上の面積をもつ正方形または円形。基準厚さは50㎜±1㎜です。(JIS K 7135の場合)

圧縮ひずみ

圧縮ひずみとは、物体を圧縮したときの厚みの変化率(圧縮率)のことです。圧縮ひずみは下記の式で算出します。

圧縮ひずみの計算方法
圧縮ひずみの計算記号

③曲げクリープ試験

通常の曲げ試験と同様、2つの支柱に試験片を乗せます。中央に一定速度で負荷をかけ、試験片を曲げていきます(3点曲げ)。
時間ごとに支点間中央のたわみを測定し、ひずみ(変化率)を算出します。

曲げクリープ試験

試験片

長さ80±2㎜、幅10.0±0.2㎜、厚さ4±0.2㎜の試験片を使用する。

曲げクリープ試験片

曲げクリープひずみ

曲げクリープひずみとは、試験片表面のたわみの変化率のことです。曲げクリープは下記の式で算出します。

曲げクリープの計算方法
曲げクリープの計算記号

応力緩和試験について(JIS K 6263)

クリープ現象と同じく、プラスチックの特性として「応力緩和」があげられます。

元々、プラスチックやゴムは、力を加えると変形し、力を取り除くと元に戻る「弾性」という性質を持っています。しかし、一定の変形を維持し続けると、元に戻ろうとする力が少しずつ小さくなっていきます。これが応力緩和です。
意図的に応力を与え、そこで発生した反力を利用する製品は多く存在します。このような製品は、品質トラブルを起こさないためにも、応力緩和特性を把握しておく必要があります。応力緩和特性は、一定の変形を与え、規定温度・規定時間その変形を維持したときの応力と初期応力との変化から求めることができます。具体的な試験方法については、JIS K 6263「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-応力緩和の求め方」に記載があります。

安田精機の試験機:No.145 クリープテスター

クリープ試験は「クリープテスター」で実施できます。滑車式、天秤式、サーボ式の3タイプがあります。また、チャック(つかみ具)を付け替えることで、引張・圧縮・曲げ試験に対応できます。

関連製品

規格一覧表

規格 年数 試験方法 規格名
JIS K 7115 1999 引張 プラスチック — クリープ特性の試験方法 — 第1部:引張クリープ
K 7135 1999 圧縮 硬質発泡プラスチック — 圧縮クリープの測定方法
K 7116 1999 曲げ プラスチック — クリープ特性の試験方法 — 第2部:3点負荷による曲げクリープ
K 6263 2022 応力緩和 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム — 応力緩和の求め方
ISO 899-1 2017 引張 Plastics — Determination of creep behaviour — Part1: Tensile creep
7850 1986 圧縮 Cellular plastics, rigid — Determination of compressive creep
899-2 2003 曲げ Plastics — Determination of creep behaviour — Part2: Flexural creep by three-point loading
338-1 2019 応力緩和 Rubber, vulcanized or thermoplastic — Determination of stress relaxation in compression — Part1: Testing at constant temperature
ASTM D2990 2017 引張・圧縮・曲げ Standard Test Methods for Tensile, Compressive, and Flexural Creep and Creep-Rupture of Plastics

参考規格

  • JIS K 7115 プラスチック-クリープ特性の試験方法-第1部:引張クリープ
  • JIS K 7135 硬質発泡プラスチック-圧縮クリープの測定方法
  • JIS K 7116 プラスチック-クリープ特性の試験方法-第2部:3点負荷による曲げクリープ
  • JIS K 6263 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-応力緩和の求め方
※プラスチックス・ジャパン・ドットコム
『製品設計の「キモ」(12)~プラスチックの応力緩和~』より

※クリープ試験法とは?概要と目的、主な試験方法について

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